トルストイの予言
バージョン1 2024.4.8



人類はなぜ戦争を繰り返すのか?
汎知性(パン・ソフィア) VS 反知性(パラノイド)
● 最終戦争直前に出現する【 別なもの】とは
● 人類に残された最後の希望【 Sophe 】とは
● 幻の共同体「蟻の街」の主催者、思想家 松居桃楼
元祖ファクトフルネス・マインドフルネス・聖書暗号解読・ワンネス……が
父 松翁から語り継がれたトルストイの予言を世界初公開
トルストイの予言
松居桃楼
「悪魔学(デモノロジー)入門」より
世界は60ページでひっくり返る
Tolstoy's Prophecy
Tolstoy's vision hack reveals for the first time in the world
The world turns upside down in just 60 pages.







━ 文豪トルストイが予言していた最終戦争直前に現れる【別なもの】
「最終的な人類撲滅戦争の前夜、 ~中略~ その直前にそれを未然にくいと
める素晴しく大きな力が出現する…( 松居桃楼「悪魔学入門」 本文より)」
━ノストラダムスが百詩篇第4巻31番で劇的に進化した新しい脳をもつ賢人
【Sophe】の出現を予言していたことを五島勉氏が2020年逝去直前に解読
「これまで解決できなかったことも新しい脳の人達には解決できるようになる
戦争も経済も愛憎も。そういう時代が来る…(kindle版あと書きより)」

松居松 翁
Seeders―笑顔の種を蒔く知の巨人たち―が語る人類の未来

トルストイの言葉
In the beginning was the Word
はじめに言葉(※ロゴス)ありき
Εν αρχηι ην ο Λόγος
他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない。
他人の幸福の中にこそ、自分の幸福もあるのだ。
Lev Nikolayevich Tolstoy

Do not build your own happiness on the misery of others. It is in the happiness of others that there is also one's own happiness.
編著 稲妻龍
著 松居桃楼
世界は60ページでひっくり返る
トルストイの予言

この物語に出逢ったその日から、頁を開いたその瞬間から、あなたの運命は大きく変わる。
あなたの心を苛む悩みは氷解し、あなたの身体を蝕む病は、今までの苦痛が嘘のように癒る。
あなたを憑依する世俗の価値観は打砕かれ、あなたは本当の自分と出逢う。
あなたは、まだ誰も見たことのない新世界に導かれ、想像もしない素晴らしい奇跡を、次々と経験する。
あなたが信じようが信じまいが、あなたの意思とは関係なく、この事は起こる。
これは永遠の生命について記した書である。
Ryu's preface
Ryu's preface
トルストイの言葉
In the beginning was the Word
はじめに言葉(※ロゴス)ありき
Εν αρχηι ην ο Λόγος
他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない。
他人の幸福の中にこそ、自分の幸福もあるのだ。
Lev Nikolayevich Tolstoy

Do not build your own happiness on the misery of others. It is in the happiness of others that there is also one's own happiness.
トルストイの予言
Tolstoy's Prophecy
まえがきに代えて
私は、このごろ、くりかえし同じ白昼夢を見る。
だが、おそらく誰も信じまいと思って黙っていた。
しかし三人の皇帝のおたずねに対して、まさにあつ
らえむきなのでお答えしよう。
…今でも、こうやって目をつぶると、一人の美しい
裸体の魔女の姿が、ありありと浮んでくる。それは、
重商主義マーカンテリズムとよばれる魔女で、髪に
は宝石の飾りを一杯につけ、左右におのおの三本ず
つ、合計六本の腕があって、その片方の三本の手に
は、それぞれ一本ずつ炬火(たいまつ)をにぎって
いる。
その魔女は、第一の炬火で、もっぱら政治家や軍
人の心に〈戦争の火〉をつけて歩く。次に二本目の
炬火は、主として宗教家(それに学者や教育者や各
種の文化人たち)の心に火をつける。すると彼らは、
名誉や利欲に迷いはじめて、真理が把握できなくな
る。最後の三本目の炬火の火は、一般家庭の夫婦、
親子、兄弟たちの心につけられる。その結果、人間
同士の愛情などというものは、まったく吹き飛んで
しまう…
ところで、世の中の情勢が、ここまで混乱しきっ
たら、それは最終的な人類撲滅戦争の前夜だと思っ
ていいのだが、その直前に、それを未然にくいとめ
る素晴しく大きな力が出現する。それは〈新らしい
宗教〉というよりも、むしろ、〈これまでの人間の
既成概念では、まったく想像もつかないようなもの
の考え方〉なのだ…
(松居桃楼「悪魔学(デモノロジー)入門」より)
「…その 平原 の 高い 山の上 に、 夜、 嘆きの月が
昇る。 新しい 脳 の スポエがひとり、 それをじっと見
つめる」 と書かれている。このスポエの正しい原句は
しかしこれまでの 賢人ではない。これまでの 人間 と
は 違う「 新しい 脳」 を 持った 賢人 なの だ。 それは
おそらく、これから の 人間 の 大脳 の 劇的な進化を示
し ているだろう。
これ までの 人間 の 知能 では 解決 できなかった こと
も( 良い方向に進化した)「 新しい 脳」の人 たちには
は解決 できるようになる。戦争も経済も愛憎も。そうい
う 時代 が 来る…
(五島勉「ノストラダムスの大予言」kindle版より)
はじめまして。
パンソフィア総合研究所代表の稲妻龍と申します。
最初に、先のふたつの文章をご紹介しました。(これ
を書いたのは、1994年に亡くなられた著述家松居桃楼氏と、
2020年に亡くなられた作家五島勉氏です)
そして、トルストイ、ノストラダムス、両者がこれを実際
に書いた、あるいは語ったとされるのは、1910年と1555年、
およそ355年の開きがあるのですが、私には彼らが、時を超
えてほぼ同じことを言っているように思えてなりません。
トルストイは、時の皇帝たちの要望で問われた未来の姿を
自らの白昼夢を告げて回答するという形で、1914年7月28日
ノストラダムスは20XX年から始まる第三次世界大戦以降
の未来を(ちなみにノストラダムスとは我々のマダムを意味
し、聖母マリアをさす)の百詩篇のうちの第4巻31番※※の
詩の解釈を通して、それぞれ現代に警鐘を鳴らしています。
まるで遺言のように突き刺さる彼らの最後のメッセージは、
私たちに予言という形で託されました。
トルストイのいう【別なもの】(正確には〈これまでの
人間の既成概念では、まったく想像もつかないような
ものの考え方〉)は、人類撲滅戦争の回避策が、そして
ノストラダムスのいう【SOPHE】には、人類が滅亡を
回避した後の、いかに共存していくかの方策、その手掛
かり・ヒントが隠されているやもしれません。
このような理由から、パンソフィア総合研究所では、
「トルストイの予言」の出典である松居桃楼氏の「悪魔
学(デモノロジー)入門」を中心に、五島勉氏の「ノス
トラダムスの大予言」kindle版のあとがきを重ねて、
【別なもの】、【SOPHE】がクロスリンクしたその先に
垣間見える真実、いったい何が浮かび上がるのか、それ
を検証するのが本作の狙いです。
第二次世界大戦の原因となった世界大恐慌前夜と、
コロナ下で経済が疲弊し、株価ばかりが暴騰する現在の
状況は、不気味なほど似ています。
さらに言えば、サラエボ事件をきっかけとして勃発し
た第一次世界大戦も、もとはと言えば、世界同時不況
という大国間のエゴ、植民地や資源をめぐる経済戦争が
原因で、これも現代社会のコンテンポラリーな状況(香
港、ウクライナ、台湾を巡る覇権戦争や、アフリカ・東
南アジア諸国への債務の罠による経済支配など)と驚く
ほどそっくりです。
「最後に先進諸国間で戦争が起こってから、もう50年以上
経っている。」「文明も成熟したこんな時代に、先進国
同士で愚かな戦争など起こるわけがない。」 第一次大戦
前の欧州では、このような論調が主流でした。 今回のロ
シアの侵略前の状況と、これも驚くほどそっくりです。
「常任理事国の核大国が、領土を争って侵略戦争など絶
対に起こすはずがない」と。
ウクライナ、台湾を巡って核保有国が侵略戦争を行う
第二次世界大戦以来、最大の脅威の時代に入りました。
文明リテラシーの低い国が核大国になり、重要な決定に
拒否権を発動できる常任理事国に紛れ込んだ時点で、す
でに第三次世界大戦は始まっていたのかもしれません。
かつてのローマンクラブ「成長の限界」の報告とは裏
腹に、人類は産業革命以降、生産過剰状態が続き、実は
核ミサイルを筆頭に、世界中に食糧、エネルギー、宝飾
品、武器など、あらゆるものがあふれかえっています。
しかし、人類はいまだに一極集中した富を公平に分配
する術を知りません。強欲な大国、図々しい金持ちが資
源を独占し、発展途上国や貧困層を支配下に置き、寄生
虫、あるいはマザーエイリアンのように養分を吸い続け
ます。今足りないのは人間の知恵です。
かつてマルクスが搾取と呼んだこの状態が続く限り、
未来永劫、持続可能な共生システムなど実現しません。
手をこまねいている間に、人類撲滅戦争、軍靴の足音が
聞こえてきます。果たして人類にまだ、救済策や希望は
残っているのでしょうか。
人類撲滅戦争を未然にくいとめる素晴しく大きな力が
出現するというトルストイの話(ファンタジー)が、も
し本当なら、松居桃楼氏の大ボラ説法に乗せられて、フ
ィロソファー(叡知者)が次々誕生する新世界、高度な
文明リテラシーを持つソフ(新しい賢者)たちの姿を覗
いてみるのも一興です。
稲妻 龍
※ “ sophe”(ソフ)という言葉は、仏語の古語(名詞)で、英語の古語 sophy または sophie ・・・「知恵・学識・賢者」を意味する。 稲妻龍は、これらをフィロソファー(叡智者)と呼び、最終戦争直前に現れるトルストイの予言の「別なもの」のビジョン、またフィロソファー(叡智者)が次々誕生する新世界のイメージを本作「トルストイの予言」、「新しい賢者(Le nouueau sophe)」の描く未来 L'avenir imaginé par le nouveau sopheの章で展開する。
※※ 2020年6月16日に亡くなられた五島勉氏の「ノストラダムスの大予言 kindle版」では、47年の時を経て、
あらたに「まえがき」「あとがき」が特別書き下ろしとして加えられた。彼の最終予言、遺言ともいえる「あとがき」の最後には、次のように書かれている。
・・・「 その 平原 の 高い 山の上 に、 夜、 嘆き の 月 が 昇る/ 新しい 脳 の スポエ が ひとり、 それ を じっと 見つめる」 と 書か れ て いる。 この スポエ の 正しい 原句 は sophe( ソフ) で「 賢人」 という 意味 だ。 しかし これ までの 賢人 では ない。 これ までの 人間 とは ちがう「 新しい 脳」 を 持っ た 賢人 なの だ。 それ は おそらく、 これから の 人間 の 大脳 の 劇的 な 進化 を 示し て いる だろ う。 これ までの 人間 の 知能 では 解決 でき なかっ た こと も、( 良い 方向 に 進化 し た)「 新しい 脳」 の 人 たち には 解決 できる よう に なる。 戦争 も 経済 も 愛憎 も。 そういう 時代 が 来る・・・
Nostredame Cent Psaumes Volume 4, No. 31 ノストラダムス百詩篇第4巻31番
La lune au plain de nuit sus le haut mont, 真夜中に月は高い山の上、
Le nouueau sophe d'vn seul cerueau la veu: 新しい賢者は唯一の脳でそれを見た。
Par ses disciples estre immortel semond その弟子たちによって不死たることを叱咤される。
Yeux au mydi. En seins mains,corps au feu. 双眼は南に。両手は胸に、体は火へ。




レフ・トルストイ
ノストラダムス
松居桃楼氏
五島勉氏

Tolstoy's Prophecy
Tolstoy's Prophecy
目 次
まえがきに代えて 稲妻 龍
松居桃楼 悪魔学(デモノロジー)入門より
第一部 トルストイの予言
本編をお読みになる前に(本編がより楽しくなる珠玉の2作品)
⒑ 幻の人権保証
⒘ 現代にもあるファウスト物語
⒗ 異端とよばれる人々の系譜
⒖ 屯の季節はいつまで続くか
⒕ フィロソフィア(愛智)の誕生
⒔ 思潮が大きく変る時
⒓ 「この世」と「あの世」の支配者
⒒ 所有とは何か
Sin War and Peace
Sin War and Peace
5 二五○年前からの軍縮論
Ryu's-eye view
Ryu's-eye view
第三部 稲妻龍による解説
Rreference material
Reference material
あとがき 稲妻龍
関連資料
⒓ ヌーブル・レジューム
⒒ 汝自身を知れ
⒑ 脳のリミッター解除
9 永遠の生命の奥義
5 反知性vs反知性の最終戦争
第四部 松居桃楼語録








突然ですが、世界には【偉大過ぎて、現代の学者・評論家の物差しでは測り切れない歴史上の人物】が何人かいます。日本、世界のそれぞれベスト3を、異論・反論・オブジェクション、炎上を覚悟の上で、発表します。
日 本 世 界
第一位 ………
第二位 ………
第三位 ………
南方熊楠と手塚治虫は言わずもがな有名ですが、松居桃楼という名前は、おそらくご存じの方は少ないのではないでしょうか。
そこで、松居桃楼がどんな人だったかを想像していただくために「と学会」会長 山本宏氏の書かれた「松居桃楼『黙示録の秘密』」の解説的文章を、そして、松居桃楼が仲間たちと一緒に主催していた蟻の街がどんなものだったのかを知っていただくために、秋本治氏「こちら亀有公園前派出所交番」『霧の中のアリア』を、両先生、並びに出版社様の特別のご許可を頂き、ご紹介させて頂きます。
南方熊楠 アルベルト・アインシュタイン
手塚治虫 ニコラ・テスラ
松居桃楼 ヨハン・ゲーテ
(パンソフィア総合研究所調べ)

本編をお読みになる前に(本編がより楽しくなる珠玉の2作品)
「山本さんはオカルト本が好きなんですか、嫌いなんですか?」と訊ねられたことがある。答えは「両方」である。オカルト本の中には、あからさまな身障者差別や民族差別を標榜する本、大虐殺を肯定し人類滅亡を待望する本がよくある。そういうのは読んでいて本当に胸が悪くなる。著者のあまりの愚かさに辟易することもある。その一方、豊富な知識に裏打ちされ、さわやかな読後感を残す楽しいオカルト本も、少数ながら存在するのだ。
この『黙示録の秘密』は僕のフェイバリットである。十数年前に古書店で見つけ、その面白さに夢中になった。僕が聖書に興味を持つようになったのは、この本がきっかけである。
松居桃楼氏は一九一○年生まれの劇作家。戦後すぐ、浅草の隅田川のほとりに生まれたバタヤ(廃品回収業者)の集落、通称「蟻の街」に住み着き、彼らの権利を守るために尽力した。一九九四年に死去。代表作には、裕福な家に生まれながらバタヤの人々のために奉仕した北原怜子さんの短い生涯を描いた『アリの街のマリア 春秋社 一九六三年/一九九八年に新版)や、ユニークな教育論や哲学を展開した『はじめはみんな宇宙塵』(柏樹社 一九八九年)などがある。
どちらも大変に良い本なので、機会があればご一読いただきたい。
本書は、ある少女に松居氏が語って聞かせた内容を、彼の世話をしている田所静枝さんが文章に起こしたもの、という形式になっている(事実かどうかはたいした問題ではない)。
昭和四○年代のある日、旧「蟻の街」に残っていた松居氏のボロ小屋に、『アリの街のマリア』の大ファンだという中学二年の少女・多田悦子が訪ねてくる。悦子の家は二代前からのクリスチャ

ンで、彼女も厳格なミッションスクールに通っていた。ところがある時、キリスト教の教えに疑問を抱くようになる。母親やシスターに訊ねても話がかみ合わない。それで家を飛び出したのだ。
思い詰めて、何度も学校の屋上から飛び降りようと思った、と語る悦子。「キリスト教のわからないことを全部、ぶっつけて、「これに対して、おとなの信者たちが、はっきりした答えを、言ってくれなければ、この屋上から飛び降りる』って叫びたかったんです」
それを聞いた桃楼じいさん、いさめるどころか、「う-ん、そいつは素晴らしい。これは素敵に面白い」と、木箱を叩いてはしゃぎだす。
まず拡声器を用意しなければ。それに疑問を箇条書きにしたものをプリントにして、上から撒いた方がいい。そうすればマスコミが大きく報道してくれるから。支援してくれるグループも用意しておこう。最低でも二週間は屋上でがんばらなくてはいけないから、前もって充分な食料を運びこんでおかなければいけない……と、悪ノリはとどまるところを知らない。
いや、なかなか食えないじいさんではないか。こういうノリは普通のオカルト本にはないものだ。僕はこのくだりで、すっかりこのじいさんが好きになってしまった。
しかし、悦子は真剣だ。答えを聞くまで、何も食べないと言う。
「宗教って、いったい、なんですか? 信仰って、どういうことなんですか? おじいちゃんは本当にキリスト教を信じてるんですか?」
じいさんはしばしの沈黙ののち、こう答える。「是非とも知りたいというなら、話してもいい。だが、それをおじいちゃんにしゃべらせる以上、君自身、いいかげんな気持ちじゃなくて、命がけででも最後まで聞くことを、約束できるかね?」
こうして、桃楼じいさんの長広舌が幕を開ける。いや、これが面白いのなんのって!
桃楼じいさんは二○代の頃、キリストの受難劇の脚本を書いてくれと頼まれたのがきっかけで聖書を読むうちに、その内容に疑問を抱くようになった。調べ続けるうちに、聖書には「永遠の命」を得るための秘密が暗号で記されているのではないかと考えるようになる(ここに出てくる 「コード」と「サイファー」についての解説には間違いがあるのだが、本筋には関係ないので省略)。もし暗号だとしたら、それを解くための鍵も聖書のどこかにあるに違いない……。
九○年代にベストセラーになるマイケル・ドロズニンの『聖書の暗号』(新潮社)と似たような発想である。だが、ドロズニンが聖書に関する初歩的知識さえ持たず、モーセの五書(『創世記』『出エジプト記』『レビ記」「民数記』「申命記」)が何千年も昔から一字たりとも変化していないという荒唐無稽な前提を元にしているのに対し、桃楼じいさんは聖書学や歴史に関する博識を武器に、聖書の成立過程や著者の動機に迫ってゆく。
桃楼じいさんが注目するのは「ヨハネの黙示録』だ。その中には封印された巻物についての謎めいた言及(第五章一節)がある。すなわち、「黙示録』の著者は旧約聖書に隠された暗号を解く鍵を発見し、それを別の暗号で『黙示録」の中に隠したのだ。巻末に、この害に決して何かつけ加えたり削除したりしてはならないという強い警告(第一三章一八~一九節)があるのは、改竄されるとその暗号が解けなくなってしまうからだ。
「黙示録』に何度も出てくる「七」「四二」という数字を手がかりに、じいさんが行き当たったのは、第一三章一八節の有名なフレーズ。
「ここに智恵が必要である。思慮ある者は獣の数字を解くがよい。その数字とは、人間をさすものである。そして、その数字は六六六である」
この文章は「六六六という数字は、人間の数である」とも読める。これは旧約聖書「エズラ記」第一一章一三節の「アドニカムの子孫は六六六人」という記述が、聖書の暗号を解く鍵であることを示している。
旧約聖書には、神を「ヤハウェ」と呼んでいる箇所と「エロヒム」と呼んでいる箇所がある。これはもともと異なる人物が書いた文書をつなぎ合わせたためだ、というのが聖書学の定説である。
ユダヤ教徒は神聖な「ヤハウェ」という名を発音するのをはばかり、「アドナイ」と呼んでいる。
すなわち、「アドニカム」を「神をアドナイ(ヤハウェ)と呼ぶこと」、「六六六」を「否定する」という意味だと解釈すると、「旧約聖書の中の、神をヤハウェと呼んでいる箇所を無視せよ」という指示になる…。
他にも「ユダヤ十二部族の父といわれるイスラエルという名の人物と、兄の地位にとって代わったヤコブは本来別人だったのではないか」など、魅力的な仮説が次々に披露されるのだが、複雑になるので途中経過は省略しよう。
現在に伝わっているモーセの五書は、紀元前五世紀頃、バビロンから帰還したエズラ(ソロモン時代の祭司ザドクの血を引く)が持ち帰ったものとされている。桃楼じいさんの推理によれば、モーセの五書は、ザドクの一族が旧ユダ王国領土の権利を主張し、支配階級の地位を強化するために、本来の内容を大幅に改竄したものだ、という。
本来のヤハウェは情け深い神だったのだが、この改竄によって、ねたみ深くえこひいきする恐ろしい神に変えられてしまった、というのだ。
だが、この改竄作業を行なった人物X(いわゆる「祭司的記者」)は、ザドク一族の陰謀に反発していた、と桃楼じいさんは考える。そこで「エズラ記」に「アドニカムの子孫は六六六人」、つまり「モーセの五書の中の、ザドク一派が捏造した部分を信用するな」というメッセージを入れる一方、『創世記」および「出エジプト記」に真の教えを隠したのだ。
じいさんは、Xの心理を推測しつつ、『出エジプト記」『創世記」の中の、神を「エロヒム」と呼んでいる部分を逆の順序で読んでいくという手法で、Xがザドク一派の目をあざむきつつ、本当に伝えたかったことを解き明かす。天地創造の物語は過去ではなく、こうあらねばならないという未来の物語であり、人はエデンの園に帰らねばならないと説いている。『黙示録」のたわごとのように見える内容も、実は「創世記」の記述をひっくり返したものであり、同じことを説いている。
ついにたどりついた「永遠の命」の秘儀 ―― それは瞑想と断食である。
なあんだ、と思ってはいけない。ここから先がすごいのだ。
Xの正体は紀元前五四○年代にいた「第二イザヤ」だと、じいさんは推論する。『イザヤ書』第二一章には、猛獣や毒蛇さえも、他の生きものを傷つけあわずに生きている理想郷が描かれている。これこそ隠されたXの思想 ―― すべての生きものが帰るべきエデンの園ではないか。
もちろん、現実には、人間は他の生きものを食わねば生きていけない。「人間が、彼らを殺して食べてこそ、彼らの命は生かされたことになるのだ」と唱える人もいる。しかし、桃楼じいさんはそんな主張に異議を唱える。なぜなら、そのような解釈を正当だとすると、人間が他の人間を犠牲にすることも正当化されかねないからだ。
この、生きものを殺したくないということは、いわゆる道徳上の善悪を言っているんじゃない。殺される者の怖れや悲しみを、自分自身の怖れや悲しみとして感ずるからだ。それも、センチメンタリズムというようなものじゃない。全智全能の慈悲ぶかい神が感じる、痛みの共感だ。
だが、そうなると、当然、動物を殺して食べるどころか、穀物や野菜の命をとることさえもつらい、到底しのびない……その問題を悩みぬいた末に、自分が生きるということが、即ち無数の他の生きものを殺すということを意味するならば、むしろ自分を殺すことによってか少しでも多くのものに生きのびてもらうより、仕方ないという思いが湧きあがってきた時、断食がはじまるのだ。
じいさんがこんな思想を抱くようになったのは、若い頃の体験が関係している。小学校時代に同級生から陰湿ないじめに遭い、青年時代を過ごした台湾では日本人が現地の人々を搾取しているのを知り、日本に帰ってからはバタヤに対する世間の迫害を目にした(こうしたことは『はじめはみんな宇宙塵』に詳しい)。人間は常に弱者を犠牲にしてきたのだ。人間だけではない、あらゆる動物が他の動植物を食わねば生きていけない以上、神の王国の到来など永遠に夢物語でしかないのではないか?
悩んでいた時、小学校時代に同級生だった中村浩・理学博士が、クロレラ食の研究をしていることを知る。霊感がひらめいた桃楼じいさんは、研究に協力するため、他の人がやりたがらない実験台に志願した。もう二年間も、毎日、クロレラの入ったパンや饅頭を食べている(『はじめはみんな宇宙塵』によれば、この実験は一九六五年から三年続いたらしい。つまり本書は一九六七年の出来事ということになる)。
桃楼じいさんの夢は、将来、クロレラの光合成の秘密が解明されて、無機物から有機物を作り出すことが可能になり、人間が他の生きものの命を取らなくても生きていけるようになることだ。何十年、何百年先かは分からない。しかし、そうなった時、人はようやく、すべての動物たちに「きみたちも是非、われわれ人間と同じように、何ものをも殺さないようになってくれたまえ」と説得することができるようになる。そして『イザヤ書』に予言された理想郷が実現する……。
その壮大な理想のために、今、桃楼じいさんはクロレラ食の人体実験に志願しているのだ。
だが、ここで非常に大切なのは、そのような大理想を実現する可能性は、今のところ、この地球上では人間の世界にしか存在しないということだ。(中略)しかたがないから、その日が来るまでは、つらくとも何かの命を奪って食べなければならないわけだ。
そこで、話は最初のふり出しに戻って、現実には、今われわれの目の前にある、このクロレラまんとうを食べるにしても、クロレラという植物や小麦の命をとることになるのだが、おじいちゃんはいつも、このクロレラまんとうにむかって、『われわれは今、神の王国の実現を心から念じながら、病気や死の心配を無視して人体実験をしているのだから、どうか、きみたちも協力してほしい』と、手をあわせて頼んでいるんだ。
さあ、どうだね悦ちゃん、きみも、このおじいちゃんといっしょに、このクロレラまんとうと牛乳にむかって、心からこの言葉をいう自信があるかね……」
僕はこのくだりを読んで、不覚にもジンときた。すべての動物に殺し合いをやめさせようというのは、小牧久時博士(「トンデモ本の世界」参照)の思想と似ている。しかし、小牧博士が高いところから声高に自分の思想を訴えているのに対し、桃楼じいさんは何世紀も先を見据え、社会の底辺でひっそりと自分の思想を実践している。そこには決定的な違いがある。
最初に書いたように、オカルト本の中には、神による大虐殺を肯定するものや、差別意識で書かれたものが多い。しかし、桃楼じいさんの信じる神(ザドク一派によって改竄される前の本来のヤハウェ)は、すべての生きものを愛する慈しみ深い神なのである。
聖書が暗号で書かれていると考え、聖書学の定説を真っ向から否定する珍説を唱えているという点では、この本はまぎれもなくトンデモ本である。しかし、その発想の根底にあるのは、弱者に対する優しい視点であり、人間同士だけでなく、あらゆる生命を平等に慈しむ思想なのだ。僕はそこにおおいに共感するのである。
とどめはあとがきだ。少女に話した内容をまとめて本にする、という話を田所さんから聞かされた桃楼じいさん、こうとぼけるのである。
「そんなことあったねえ……その時、そんなことをしゃべったの……? そうか、お母さんが迎えに来る前に逃げ出すといけないから、必死で大法螺言ったんだな……」
ヤラレタ。最後まで食えないじいさんだ。 (山本 弘)



集英社 ジャンプコミックス 第194巻 二〇一五年 三月出版
「霧の中のアリア」というタイトルで秋本治先生が、全二百一巻、全一九六〇話中で唯一「蟻の街のマリア」に関する内容を描かれている。
東京都からの立ち退き要求で、廃品回収の出来ない都心から遠く離れた8号埋立地を代替地としてあてがわれたことで商売が成り立たなくなった経緯などが分かりやすく描かれている。電子書籍化されているので、この作品もすぐに閲覧できる。




アインシュタインの言葉

Peace cannot be enforced.
It can only be reached by understanding.
平和は強制できるものではない。
それは理解することでしか、到達することができないものだ。
Albert Einstein
マズローの言葉

The person who seeks power is For the most part Only those who are not qualified to have such power.
権力を求める人間というのは、だいたいにおいて
そんな権力を持つ資格のない者だけである。
Abraham Harold Maslow
Introduction to demonology
第三部 悪魔学入門


